夏に悪化しやすい睡眠時無呼吸症候群(SAS)|いびき・眠気のリスクと対策について
夏は寝苦しさから睡眠の質が落ちやすい季節ですが、その不調は暑さだけが原因とは限りません。いびきや日中の強い眠気の背景に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れているケースもあります。本記事では、夏にSASの症状が悪化しやすい理由や見逃しやすいサインのセルフチェック、放置した場合のリスク、CPAP治療の概要について解説します。
目次
夏は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状が悪化しやすい季節
夜になっても気温が下がらず、寝苦しさで何度も目が覚めてしまう——そんな経験は多くの方にあるのではないでしょうか。夏は湿度や熱帯夜の影響で睡眠の質が低下しやすい季節ですが、実はそれだけが原因とは限りません。単なる「夏バテ」だと思っていた眠りの浅さの背景に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れているケースもあります。
夏場に睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状が目立ちやすい理由

夏場は気温以外にも、SASの症状を悪化させやすい要因が重なりやすい季節と言われています。
- ● 就寝前の飲酒機会の増加
アルコールは上気道周辺の筋肉を弛緩させ、いびきや無呼吸を助長しやすくなると考えられています。 - ● 冷房による鼻粘膜の乾燥・鼻づまり
鼻呼吸がしづらくなることで口呼吸が増え、いびきにつながりやすくなります。 - ● 熱帯夜による中途覚醒の増加
もともと浅い睡眠にSASによる無呼吸が重なることで、日中の眠気や倦怠感がより強く現れやすくなります。
これらが複合的に作用することで、「夏になるといびきや眠気がひどくなる」と感じる方が増える傾向があります。
こんな症状はありませんか?
睡眠時無呼吸症候群は自覚しにくいことが多く、周囲からの指摘で気づくケースも少なくありません。次のような症状に心当たりがないか、確認してみてください。
あなたはいくつ当てはまりますか?
- 家族やパートナーから「いびきがうるさい」「呼吸が止まっている」と指摘されたことがある
- 十分な睡眠時間を取っているはずなのに、日中に強い眠気や倦怠感がある
- 起床時に頭痛や口の渇きを感じることが多い
- 夜間に何度も目が覚める、あるいは息苦しさで目が覚めることがある
- 車の運転中や会議中など、緊張感のある場面でも強い眠気に襲われることがある
- 夜間、何度もトイレに起きる
- 健康診断などで高血圧を指摘されたことがある
- 最近体重が増えた、または肥満気味である
- 首まわりが太い、または顎が小さい・後退気味である
これらの症状のうち3つ以上当てはまる場合、SASのリスクが高い可能性があるとされています。SASの可能性も視野に、一度検査を検討いただくことをおすすめします。
無呼吸状態を放置するとどうなるか?
SASは睡眠中に呼吸が止まることで体が酸欠状態となり、血圧上昇や心臓・血管への負担につながる可能性が指摘されています。症状を自覚しにくく、「いびきだから」と見過ごされやすい病気ですが、生活習慣病や心血管疾患のリスクとの関連も報告されており、早めの検査・対策が望ましいとされています。
SASの治療について

SASの治療法の中でもっとも標準的に用いられているのが、CPAP(持続陽圧呼吸療法)です。日本呼吸器学会の「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」においても、中等症〜重症のSASに対する第一選択の治療法として位置づけられています。就寝時に専用の機器を用いて気道に空気を送り込み、無呼吸を防ぐことで睡眠の質の改善が期待できます。
SASが疑われる場合、まずは自宅で行う簡易検査からスタートします。指先や鼻に小型のセンサーを装着し、一晩の睡眠中の呼吸状態や酸素飽和度を記録する検査です。自宅でできるので、普段の睡眠環境のまま、検査を行うことができます。

簡易検査の結果、呼吸障害指数(RDI)が一定の基準を超えている場合はそのままCPAP治療の導入を検討できますが、基準に届かない場合や、より詳細な評価が必要と医師が判断した場合は、ポリソムノグラフィー(PSG)と呼ばれる精密検査を行うことがあります。PSG検査は一般的に入院で行われることが多い検査ですが、ウェルスリープクリニックでは自宅で実施いただけます。呼吸や酸素飽和度に加え、脳波や体位センサーなども記録し、無呼吸低呼吸指数(AHI)に基づくより正確な重症度判定が可能です。
検査の結果、RDI(簡易検査)またはAHI(PSG検査)が一定の基準を満たす中等症以上と診断された場合は、CPAP治療が保険診療の対象となります。まずは検査を受けていただき、医師の診断のもとで治療方針をご相談しましょう。
夏こそ、眠りを見直すきっかけに
「夏だから眠りが浅いのは仕方ない」と諦めず、気になる症状がある方は一度専門的な検査を受けてみることをおすすめします。ウェルスリープクリニックでは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関するご相談・検査を承っております。お気軽にご相談ください。
参考文献
- 日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
- Chung F, et al. STOP-Bang Questionnaire: A Practical Approach to Screen for Obstructive Sleep Apnea. Anesthesiology. 2008
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群のリスク評価における日本語版STOP-Bangテストの有用性
コラム監修者
略歴
- 横浜市立大学附属病院
- 横浜市立大学附属 市民総合医療センター
- 東京慈恵会医科大学附属病院 耳鼻咽喉科 助教
- 東京都立豊島病院
- 聖路加国際病院
- 太田睡眠科学センター 非常勤
- 東京慈恵会医科大学附属病院 耳鼻咽喉科 博士号取得
- Dクリニック東京ウェルネス 睡眠センター長
- ウェルスリープクリニック東京 院長
認定資格
- 日本睡眠学会 総合専門医
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳鼻咽喉科専門医