【医師監修】舌下免疫療法は目のかゆみにも効く?治療中の副作用や目薬併用の対処法
スギ花粉やダニによるアレルギー性鼻炎の治療法として、舌下免疫療法を選択する人が増えています。鼻水やくしゃみへの効果は広く知られていますが、「目のかゆみにも効果があるのか」「治療中に目薬を使っても問題ないのか」と疑問を持つ方も少なくありません。
舌下免疫療法は、アレルギー症状を一時的に抑える対症療法ではなく、アレルギーの原因に働きかけてアレルギー体質の改善を目指す治療法です。目のかゆみに対する効果、副作用が起こる理由、目薬との併用方法について、わかりやすく解説します。
舌下免疫療法とは
舌下免疫療法は、アレルギーの原因となるアレルゲンを少量ずつ体内に取り込み、免疫を徐々に慣らしていく治療法です。現在、日本ではスギ花粉症とダニによるアレルギー性鼻炎が保険診療の対象となっています。毎日1回、薬を舌の下で一定時間保持した後に飲み込むだけで治療を進められるため、自宅でも継続しやすい点が特徴です。ただし、十分な効果を得るには3〜5年程度の継続が推奨されており、自己判断で中断せず治療を続けることが重要です。
舌下免疫療法の仕組み
舌下免疫療法は、花粉やダニの成分を含んだ薬を毎日継続して投与することで、「これは過剰に攻撃すべき敵ではない」と体に学習させていきます。この仕組みにより、目のかゆみや鼻水を引き起こす過剰な反応が起こりにくくなります。一時的に症状を抑え込むだけの薬とは異なり、長期間にわたって快適な状態を維持するアレルギー体質の改善が期待できます。
期待できる主な効果と治療期間
舌下免疫療法では、くしゃみや鼻水だけでなく、目のかゆみや涙目の改善も期待できます。効果の現れ方には個人差がありますが、治療を続けることで症状が軽くなり、対症療法の薬を減らせる可能性があります。一方で、即効性のある治療ではありません。症状の改善を実感するまでには数か月から1年程度かかることがあり、アレルギー体質の改善を目指すためには継続が欠かせません。
治療開始から数か月で症状の軽さを実感する方もいますが、改善を定着させるには3〜5年ほどの継続が望ましいです。途中でやめてしまうと十分な治療効果が得られない可能性があるため、毎日の服用を習慣にできるかが鍵です。
舌下免疫療法による目のかゆみへの効果
春先や年間を通じて続く「目のかゆみ」や「涙目」は、日常生活において大きなストレスとなります。「目をこすってはいけない」と分かっていても我慢できず、目元を赤く腫らしてしまう方も少なくありません。
舌下免疫療法はアレルギー性鼻炎(くしゃみ・鼻水など)の治療として知られていますが、実は目のかゆみや涙目の改善にも高い効果が期待できます。アレルギーの原因物質を体内に取り込むことで全身の免疫システムに直接働きかける治療法であるため、鼻と目の症状を同時に和らげることが可能です。臨床試験では多くの患者で症状の改善がみられたとする報告があります。
鼻症状と目の症状の改善度の違い
舌下免疫療法は鼻と目の両方にアプローチできますが、効果の表れ方には以下のような違いがあります。
目の症状が残る場合は無理に我慢せず、点眼薬(目薬)を併用しながら治療を進めるのが一般的です。
効果が実感できるまでの期間目安
舌下免疫療法は即効性のある治療ではないため、効果を実感するまでには数か月から1年ほどの期間がかかります。飲み始めてすぐに変化がなくても、焦る必要はありません。まずは体質を少しずつ変えていくイメージで、1年を目標に継続することが大切です。
舌下免疫療法の副作用で目のかゆみが出る原因

治療の目的はアレルギー症状を和らげることですが、開始直後に目のかゆみが現れると「本当にこのまま続けて大丈夫だろうか」と不安を感じるかもしれません。実は、この反応には明確な理由があります。
舌下免疫療法は、アレルギーの原因物質であるスギやダニのエキスをあえて体内に取り込む治療法です。治療開始の直後に一時的に目のかゆみが強くなることがありますが、これは決して異常ではなく、治療のメカニズム上、起こり得る反応です。体が異物に正しく反応し、免疫が徐々に慣れようとしている過程とも言えます。副作用は薬の成分が直接触れる口の周辺に出やすく、目のかゆみなども薬の濃度を増やしていく初期段階に集中する傾向があります。多くの場合、症状は一時的なものにとどまり、治療を続けて体が慣れるにつれて自然と落ち着いていきます。
アレルギー反応による局所的な副作用
舌下免疫療法では、最初のうちは体がエキスを「異物」と認識し、防御反応(アレルギー反応)を起こします。これが、治療初期に目のかゆみや鼻水が一時的に悪化する原因です。体がアレルゲンに慣れようとしている過程の反応であり、治療を続けるうちに免疫が順応し、症状は自然と落ち着いていきます。
副作用が生じやすい時期と期間
目のかゆみなどの副作用が特に現れやすいのは、治療を開始してから最初の1か月間です。薬の濃度を段階的に増やしていく初期段階に集中しやすく、薬を服用した直後から数時間以内に治まるケースがほとんどです。最初の1か月を過ぎて体がアレルゲンに慣れてくれば、こうした初期症状は徐々に軽減していきます。
治療中に目のかゆみが出た場合の対処法

舌下免疫療法の治療中に目のかゆみを感じた場合、無理に我慢せず別の治療薬を併用するのが基本の対応です。日々の不快な症状に耐え続けるのは想像以上のストレスになりかねません。具体的には、抗アレルギー成分を含む点眼薬や内服薬を一緒に使うことができます。特に花粉の飛散ピーク時や、治療を始めたばかりで体がアレルゲンに慣れていない時期には、症状を直接抑える対症療法との組み合わせが有効です。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 抗アレルギー点眼薬(目薬)の併用 | アレルギー体質の改善には時間がかかるため、かゆみが強いときは抗アレルギー点眼薬を問題なく併用できます。特に花粉の飛散ピーク時や治療初期は、目薬を上手に使うことが治療を挫折しないためのポイントです。 |
| 内服薬(飲み薬)の併用 | 目薬だけでなく、これまで使用していた抗ヒスタミン薬などの内服薬(アレルギー薬)も併用可能です。飲み薬で全体の症状をコントロールしながら、舌下免疫療法で少しずつ体を慣らしていくアプローチが有効です。 |
医師への相談と服用量の一時的な調整
強い目のかゆみや口内の腫れが続く場合は、自己判断で服用を中止せず、まずは処方元の医師に相談してください。症状に合わせて、以下のような柔軟な調整が行うことがあります。どのような対応が良いか、医師に相談しましょう。
- ・適切な目薬や内服薬の追加処方
- ・舌下免疫療法の服用量を一時的に減らす
- ・数日間休薬し、症状が落ち着いてから再開する
日常生活で取り入れるべき目のかゆみ対策
薬による治療だけでなく、日々の生活のなかでアレルゲンを遠ざける工夫も欠かせません。外出時のアイテム選びから帰宅後のケアまで、日々の負担にならない範囲で無理なく続けられる方法を組み合わせるのがコツです。
花粉飛散期のゴーグル・メガネ着用
外出時に目に入る花粉の量を減らすことが、かゆみ対策の基本です。環境省のデータによると、メガネを着用するだけでも以下のようなカット効果が期待できます。治療中で目が敏感になっている時期だからこそ、物理的な遮断が効果を発揮します。

コンタクトレンズの適切な使用と洗浄
コンタクトレンズと角膜の間には花粉が蓄積しやすく、アレルギー症状を悪化させる原因になります。かゆみが強い日は無理をせずメガネへ切り替えるか、レンズを装着する場合は防腐剤無添加の人工涙液でこまめに目を洗い流すなどのケアを心がけてください。
帰宅時の洗顔と人工涙液による点眼
帰宅後は、顔や目の周りに付着したアレルゲンを速やかに落とす習慣をつけましょう。
舌下免疫療法のメリットとデメリット
舌下免疫療法の治療を始める前に、得られるメリットと向き合うべき負担の両方をじっくり比較検討しておきましょう。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| アレルギー体質の改善が期待できる | 長期間の継続が必要 |
| 対症療法のような「一時的な症状の緩和」ではなく、アレルギー体質の改善を目指せます。将来的にアレルギー薬を減らせる、あるいは不要になる状態を目指せるため、毎年の通院負担や生涯にかかる医療費を抑えることにもつながります。 | 通常3〜5年という長期間の継続が推奨されています。また、1日1回服用の飲み忘れを防ぐためのライフスタイルへの組み込み(歯磨きと一緒に服用するなど)が必要です。 |
| 目のかゆみを含む複数症状に同時アプローチできる | 副作用リスク |
| 鼻水・くしゃみだけでなく、目のかゆみや涙目など複数のアレルギー症状に対して同時に効果が期待できます。毎シーズン複数の対症薬を使い分ける手間を減らせる点も利点です。 | 原因物質を体内に取り込むため、ごく稀に血圧低下や呼吸困難を伴う「アナフィラキシー」などの重篤なアレルギー反応が起きるリスクがゼロではありません。初回の服用は必ず医師の監視のもと(院内で30分間待機)で行うルールが徹底されています。 |
舌下免疫療法の対象者と開始タイミング
舌下免疫療法の対象となるのは、スギ花粉またはダニアレルギーと確定診断を受けた5歳以上の方です。毎日薬を舌の下に1分間保持する必要があるため、その動作ができることが最低条件となります。年齢を満たしていても、重度の喘息がある方や妊娠中の方などは対象外となることがあります。
なお、当クリニックでは診療体制上、新規の治療開始は12歳以上の方を対象としております。12歳未満のお子さまについては、他院で治療を開始された方の転院・継続治療はお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。
スギ花粉症とダニアレルギーの適応条件
治療を始めるには、血液検査(アレルギー検査)を通じて「スギ花粉」または「ダニ」のアレルギーと確定診断を受けている必要があります。検査結果でスギまたはダニがクラス2以上であれば治療の適応となります。ただし、重度の喘息がある方や妊娠中の方などは対象外となる場合があります。
治療を開始できない時期と最適なタイミング
アレルギーの種類によって、治療をスタートできる時期が異なります。
- 【スギ花粉症】
- 花粉が飛散している時期(一般的に1月〜4月頃)は、副作用が強く出やすいため治療を開始できません。飛散が落ち着いた5月中旬〜12月頃が最適な開始時期です。

- 【ダニアレルギー】
- 季節を問わず、年間を通じていつでも治療を開始できます。

舌下免疫療法と目のかゆみに関するよくある質問
| Q. 市販の目薬は併用してもよいか? |
| 基本的には併用しても問題ありません。ただし、市販の目薬に含まれる「血管収縮剤」などの成分は、長期連用に向かない場合があります。購入時に薬剤師へ相談するか、次回の診察時に医師へ併用している旨を伝えておくと安心です。 |
| Q. 目のかゆみが強い日は服用を休むべきか? |
| 自己判断での休薬は避けてください。舌下免疫療法は、毎日少しずつアレルゲンを体に取り込むことで免疫を慣らしていく治療です。中断すると効果が薄れてしまう可能性があるため、かゆみが強い日は休むのではなく、点眼薬や内服薬を併用しながら服用を継続し、主治医に相談しましょう。 |
| Q. 子どもでも治療や目薬の併用は可能か? |
| 5歳以上で、お薬を舌の下に1分間保持できるお子さんであれば治療可能です。大人と同様、治療中に目のかゆみが出た場合の目薬の併用も問題ありません。お子さんの症状に合わせて適切に対症療法を組み合わせながら、無理なく進めていきます。 |
| Q. 舌下免疫療法を始めれば、今シーズンの目のかゆみはすぐに治まりますか? |
| 治まる方もいますが、すぐに目のかゆみが完全に消えるような即効性はありません。舌下免疫療法は、体をアレルゲンに少しずつ慣らしていくアレルギー体質の改善を目的とした治療だからです。効果を実感できるようになるまでには、数か月から半年以上の期間が必要とされています。そのため、治療を開始した最初のシーズンは、これまで通り抗アレルギーの目薬や内服薬を併用してかゆみを抑えるのが一般的です。 |
| Q. 治療中に、副作用で逆に目のかゆみがひどくなることはありますか? |
| 薬を口に含んだ直後(特に治療の初期段階)に、一時的な副作用として目のかゆみ、充血、涙目、または口の中の腫れや喉のイガイガ感が生じることがあります。多くの場合、服用を続けて体が慣れていくにつれて、これらの症状は軽くなっていきます。あまりにも目のかゆみが激しい場合や、毎回強い症状が出る場合は、自己判断で服用を中止せず、必ず担当医に相談しましょう。 |
まとめ
舌下免疫療法は、花粉シーズンだけでなく年間を通じた長期間の服薬が必要な治療です。途中で自己判断により止めてしまうと、十分な治療効果が得られない可能性があります。治療の過程で目のかゆみが気になるときは、我慢せずに抗アレルギー点眼薬などを適切に併用して乗り切るのが基本方針です。一時的な副作用やシーズン中の症状悪化に直面しても、医師と連携して薬を調整すれば、治療をあきらめる必要はありません。3〜5年という期間は長く感じられますが、毎年のシーズンを快適に過ごせる未来に向けた確実なステップです。
ウェルスリープクリニックでは、初診・血液検査は対面で行いますが、再診以降はオンライン診療にも対応しています。お仕事や家事でお忙しい方でも、スマートフォンやパソコンから診察を受けられるため、3〜5年の治療も負担を軽減しながら継続できる環境が整っています。目のかゆみ等のアレルギー症状でお悩みの方は、まずは医師にお気軽にご相談ください。
参考文献
- 東京都健康安全研究センター「花粉症対策のページ」
- 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会「鼻アレルギー診療ガイドライン(2024年度版)」
- 日本アレルギー学会「アレルゲン免疫療法の手引き」
- KEGG MEDICUS「シダキュア添付文書」
- KEGG MEDICUS「ミティキュア添付文書」
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」
コラム監修者
略歴
- 日本大学付属練馬光が丘病院
- 日本大学医学部医学科 循環器学博士号取得
- 川口市立医療センター
- 東京臨海病院
- 敬愛病院・敬愛病院附属クリニック 副院長
- Dクリニック東京ウェルネス 院長
- ウェルスリープクリニック大阪 院長
認定資格
- 一般社団法人日本循環器学会 循環器専門医
- 一般社団法人日本内科学会 総合内科専門医
- 日本医師会認定産業医
- 臨床研修指導医